概要
偽膜性大腸炎は、大腸の粘膜に「偽膜」と呼ばれる膜状の変化がみられる病態で、多くはクロストリディオイデス・ディフィシル(C. difficile)感染症の一型です。抗菌薬の服用中や終了後に水様性下痢、腹痛、発熱などが起こります。ただしC. difficile感染症でも偽膜が見られないことがあり、抗菌薬後の下痢がすべてこの感染症とは限りません。頻回の下痢、強い腹痛、腹部膨満、発熱、飲めない状態は早めに医療者へ連絡してください。
原因
抗菌薬で腸内細菌のバランスが変わると、C. difficileが増え、作る毒素によって大腸に炎症が生じることがあります。高齢、入院・介護施設での滞在、以前の感染、免疫低下なども危険因子です。短期間の抗菌薬でも起こり得るため、「長期服用した高齢者だけの病気」ではありません。菌は便に出て環境中で芽胞として残り、手や汚染された表面を介して広がります。
治療法
抗菌薬の服用中または服用後に頻回の下痢が出たら、処方した医師や薬剤師に速やかに連絡し、薬の名前と服用期間、便の回数を伝えます。処方薬を自己判断で中止・変更せず、医師が原因薬の継続可否と便検査を判断します。症状と検査を合わせて診断し、必要に応じてフィダキソマイシンまたは経口バンコマイシンなどで治療します。メトロニダゾールを一律の第一選択とせず、重症度と再発歴で治療を変えます。脱水を補い、トイレ後は石けんと流水で手を洗います。
服薬中・終了後の下痢を見逃さない
抗菌薬の服用中や終了後の頻回・持続する下痢、腹痛、発熱は処方元へ連絡します。処方薬を自己判断で中止せず、症状と服薬記録を伝えます。
偽膜がなくてもC. difficile感染症はあり得る
偽膜性大腸炎はC. difficile感染症の一部です。内視鏡で偽膜がないことだけで除外できず、抗菌薬後の下痢すべてをC. difficileと断定もしません。
症状と便検査を合わせて判断
便の検査が陽性でも無症状の保菌があり、結果だけでは治療の要否を決められません。医師が下痢の回数、下剤使用、他の原因も確認します。
治療薬は現在の推奨を踏まえて選ぶ
治療が必要なら、医師がフィダキソマイシンまたは経口バンコマイシンなどを選びます。メトロニダゾールを全例の基本薬とはしません。
石けんと流水で手を洗う
便を介して広がる芽胞が残るため、トイレ後や食前の手洗いを徹底します。家庭や施設での清掃方法は医療者の指示を受けます。