概要
僧帽弁逸脱症(そうぼうべんいつだつしょう)は、心臓が縮むときに僧帽弁の一部が左心房側へふくらむ状態です。逸脱があっても必ず血液の逆流が起きるわけではなく、多くの人は無症状です。一部では僧帽弁逆流が強くなり、動いたときの息切れ、動悸、疲れやすさなどにつながります。心エコーで逆流の有無と程度、心臓の大きさや働きを確認することが大切です。
原因
弁の組織が柔らかく厚くなる変性が主な背景で、体質や結合組織の病気が関わることもあります。心筋梗塞や感染性心内膜炎は僧帽弁逆流の別の原因にもなりますが、それだけで僧帽弁逸脱症の原因と決められません。
治療法
治療と経過観察は、逸脱という所見だけでなく、逆流の程度、症状、心臓の大きさ・働き、不整脈を合わせて決めます。逆流がないか軽く、心臓への影響がなければ処置を要しないこともありますが、再診の要否を担当医に確認してください。重い逆流では、症状がなくても心機能の変化などを踏まえて弁形成術などを検討します。薬は症状や合併症に応じて使い、逸脱そのものを治す薬ではありません。歯科で抜歯などを受けるときは弁逆流の有無を伝え、感染性心内膜炎予防の抗菌薬が必要か循環器医・歯科医に相談します。
急な強い息苦しさや失神は救急へ
突然の強い呼吸困難、意識を失う、胸の強い痛みが続く場合は119番へ連絡してください。「逸脱症があるから」と症状の原因を決めつけず、救急で評価を受けます。
息切れや動悸が新たに出たら相談
階段や坂道での息切れ、夜間や横になったときの息苦しさ、動悸、むくみ、疲れやすさが続くときは循環器内科に相談してください。症状の程度といつからかをメモすると、心エコーや心電図の再評価に役立ちます。
逸脱と逆流は別々に確認する
心エコーで「逸脱しているだけか、逆流はあるか」「逆流はどの程度か」「左心房・左心室の大きさと働きはどうか」「次回の確認は必要か」を聞いてください。逸脱という名前だけでは治療の要否は決まりません。
症状がなくても重い逆流は評価を続ける
逆流が軽い場合の再診間隔は心エコー所見と個人の状況で決めます。重い僧帽弁逆流では、症状がなくても心臓の大きさ・機能や心房細動の発生を定期的に調べ、弁形成の時期を検討することがあります。
弁形成術を考えるのはいつか
逆流が強く、症状や心臓への負担がある場合は、弁を修復する形成術などを相談します。無症状でも重度の逆流と心機能の変化があれば対象になることがあります。薬を飲んでいるかどうかだけで手術の時期は決めません。
歯科処置前に弁逆流の有無を伝える
国内の2026年ガイドラインでは、逆流を伴う僧帽弁逸脱症は、抜歯など侵襲的な歯科処置の際に予防的抗菌薬を考慮する中等度リスクです。逆流のない逸脱症には予防投与を勧めていません。人工弁や感染性心内膜炎の既往などがあれば別の扱いです。自己判断で抗菌薬を飲まず、循環器医と歯科医に確認してください。