概要
腎静脈血栓症は、腎臓から血液を送り出す静脈に血栓ができ、血流を妨げる病気です。ゆっくり進行して症状が乏しい場合もあれば、急に発症して背中・脇腹の痛み、血尿、尿量の減少、吐き気などが出る場合もあります。腎臓の機能が悪化したり、血栓が肺へ移動して肺塞栓症を起こしたりすることがあります。
原因
ネフローゼ症候群、がん、血液が固まりやすい状態、静脈への圧迫などが背景になります。けが、妊娠、ホルモン薬などが関係する場合もあり、乳児では脱水も重要な原因です。見つかった血栓を治療するだけでなく、原因となった病気や薬、血栓症の既往などを確認します。
治療法
血栓が増えることや肺塞栓症を防ぐための抗凝固療法と、背景にある病気の治療を行います。血栓や腎機能の状態などに応じて、血栓を溶かす治療、カテーテルによる治療、手術などを検討する場合もあります。急な腎機能低下では透析が必要になることがあります。薬の種類・量・期間は個別に決め、腎機能、原因、出血の危険、治療の経過を確認します。
血尿・尿量低下は早く相談、急な呼吸困難は119番
急な背中や脇腹の痛み、血尿、尿が明らかに少ないなどの変化は、速やかに医療機関へ相談してください。ネフローゼ症候群などで通院中の人も、次の予約まで待たず変化を伝えます。急な呼吸困難、強い胸痛、意識がおかしい場合は119番です。症状だけで腎静脈血栓症と決めつけず、ほかの病気も含めて評価を受けてください。
画像で血流を、血液・尿で腎機能と背景を確認する
血液検査や尿検査で腎機能、尿のタンパクや血液などを調べ、CT、MRI、ドプラ超音波などで腎静脈や血流を評価します。使う検査は状況によって変わり、全員にすべてを行うわけではありません。検査結果から、血栓の場所、腎機能への影響、背景にある病気、必要な治療について説明を受けましょう。
抗凝固薬は、腎機能・出血・併用薬を確認して使う
抗凝固薬は血栓の増大や新しい血栓を防ぐ薬です。血栓を直接溶かす薬とは目的が異なります。腎機能やネフローゼ症候群、併用薬などを踏まえて処方と検査を決めます。血尿などが出たら医療者へ連絡し、症状が軽くなっても自己判断で中止・増減しないでください。止まらない出血や吐血、黒い便、意識の異常などは緊急の評価が必要です。薬の名前、飲み忘れ時の対応、連絡先を確認しましょう。
血栓ができた後の治療と、予防の薬は別の判断
ネフローゼ症候群では血栓ができやすくなりますが、血栓が確認された人の治療と、まだ血栓がない人への予防投薬は区別します。予防投薬は、血栓の危険と薬による出血の危険を個別に比較する判断です。尿タンパクや血液のアルブミンの値だけで、自分で薬を始めることはできません。背景の腎臓病の治療も続け、予防が必要かは担当医に確認してください。
がんの静脈内への進展は、通常の血栓と区別する
腎がんが静脈内へ伸びてできる「腫瘍栓」は、血液が固まってできる通常の血栓とは区別して考えます。画像などで広がりを調べ、泌尿器科などの専門医ががんの治療を検討します。静脈が詰まっているという情報だけで、抗凝固薬だけで治ると考えないでください。がんに伴う血栓と腫瘍栓のどちらを指しているのか、診断の説明で確認しましょう。
原因の治療と、腎機能・血栓・出血の経過を追う
回復の見通しは、原因、腎臓への損傷、合併症などで変わります。抗凝固薬をいつまで使うか、どの検査で経過を確認するか、次の受診時期を相談してください。尿量、血尿、新しい痛み、呼吸の変化は早めに伝えます。水分や活動の指示がある人はその計画に従い、自己判断で大量に水を飲むことや、長い安静を続けることは避け、変更が必要かを担当医へ確認しましょう。