概要
多発性嚢胞腎(PKD)は、腎臓に液体のたまった袋である嚢胞が多くできる遺伝性の病気です。常染色体顕性(優性)のADPKDと、常染色体潜性(劣性)のARPKDがあります。ADPKDは成人で見つかることが多く、初めは自覚症状がない場合もあります。腹部の張り、腹痛・腰痛、血尿、高血圧や腎機能低下などを来すことがあります。病型と進行には個人差があり、単純性腎嚢胞とは区別して診断します。
原因
嚢胞の形成には遺伝子の変化が関係します。遺伝の仕方と病状はADPKD・ARPKDで異なり、家族に診断された人がいなくても発見されることがあります。『胎児期に尿の流れが悪くなるから』という説明だけでは、病態を説明できません。家族歴・年齢・画像・腎機能などを合わせ、必要な場合は遺伝学的検査も検討します。同じ家族でも経過が同じとは限りません。
治療法
病型と腎機能・進行の評価に合わせて治療します。ADPKDでは血圧管理や合併症の治療を行い、条件に合う患者にトルバプタンによる進行抑制を検討します。すべての嚢胞をなくす根治療法と、病気の進行を抑える治療は別です。ARPKDでは腎臓・肝臓などの障害に応じた専門診療が必要です。進んだ腎機能低下では、透析・腎移植なども病状と希望に合わせて相談します。
発熱と腹痛・血尿、突然の激しい頭痛は早く相談
発熱と腹痛・わき腹の痛み、肉眼で分かる血尿などが出たら、嚢胞感染や出血などを確認するため治療先へ早めに連絡します。血尿をすべて嚢胞のせいと決めつけないでください。突然の経験したことのない激しい頭痛、意識の異常・けいれんは119番です。救急の担当者には多発性嚢胞腎があることも伝えます。
嚢胞の数だけで判断せず、病型と進行を確認
尿・血液・血圧と超音波などの画像を調べ、必要に応じCT・MRIや遺伝学的検査を検討します。嚢胞の数だけで遺伝性の病気と決めず、家族歴、年齢、腎臓の大きさなどを合わせて判断します。診断後は、腎機能の推移や腎臓の容積から進行の程度を説明してもらい、次の検査と治療の相談につなげましょう。
トルバプタンは適応と検査、水分・休薬の計画を確認
トルバプタンは、条件に合うADPKDの進行を抑えるための薬です。誰にでも使う薬ではありません。肝機能・血清ナトリウムなどの定期検査と、尿量が増えることへの備えが必要です。水を飲めない日、嘔吐・下痢、暑い環境などでは脱水の危険が増えるため、連絡先と薬を休む場合の指示を前もって確認します。効く見込み、副作用、通院と仕事への影響も相談してください。
ADPKDでは脳動脈瘤の検査を個別に相談
ADPKDでは、脳動脈瘤やくも膜下出血のリスクを確認します。自分の出血歴や家族の脳動脈瘤・くも膜下出血・原因不明の突然死について伝えてください。検査を受ける利点と限界、不安や希望を話し合い、必要なMRAなどを計画します。一度の検査で将来の危険がなくなるわけではありません。急な激しい頭痛は、過去の検査結果にかかわらず救急の対象です。
家族の検査・子ども・妊娠は、希望を含めて相談
家族に病気がある場合、検査を受ける時期や方法、結果による利点と負担を相談できます。子どもは年齢・理解と本人や保護者の希望を踏まえ、小児の専門医と考えます。診断がついている場合は血圧・腎機能などを確認し、成人診療への引き継ぎを計画します。妊娠を希望するときは前もって腎臓・血圧と薬を相談し、妊娠が分かったら治療先へ連絡してください。遺伝についての不安は遺伝カウンセリングでも相談できます。
水分・食事・運動と生活の負担を個別に調整
水分量は腎機能、薬、体調に合わせて確認し、全員が同じ量を飲むことや、水を多く飲むだけで治療を置き換えることは勧めません。家庭血圧を記録し、減塩と栄養、体重、運動を相談します。大きな腎臓・肝臓がある場合は衝突や腹部への強い衝撃を伴う運動に注意が必要です。過度な安静を続けず、仕事・通学、痛み・不安や費用の相談も診療チームと共有しましょう。