概要
血栓性静脈炎は、静脈に血栓と炎症が生じ、血管に沿った痛み、赤み、熱感、腫れなどを起こす病気です。皮膚のすぐ下の静脈では、硬い筋やしこりのように触れることもあります。この記事では主に表在性の病気を扱います。深部静脈血栓症とは区別しますが、深い静脈へ血栓が広がる場合もあるため、見た目だけで軽い病気と判断しないことが大切です。
原因
下肢静脈瘤、静脈への注射・点滴、血流の停滞、血液が固まりやすい体質などが関係します。妊娠、がん、ホルモン薬、血栓症の既往、ベーチェット病などが背景になる場合もあります。原因が明らかでないこともあります。点滴後の静脈炎には血栓を伴わないものもあり、痛みや赤みだけで自分で診断することはできません。
治療法
症状を和らげる治療と、血栓の進展を防ぐ治療を分けて考えます。軽い表在性の炎症では、痛み止めや外用薬、患肢の挙上、適切な圧迫などを検討します。血栓が広い範囲にある、深部静脈との合流部に近いなどの場合には、抗凝固療法が必要かを評価します。感染を伴う場合は抗菌薬などが必要です。単に「数週間安静にすれば治る」「長引けば抗血小板薬を使う」という一律の治療ではありません。
腫れ・痛みの悪化は早めに相談、呼吸困難は119番
脚全体が腫れる、痛みが急に強くなる、赤みや硬い部分が太もも・脚の付け根などへ広がる場合は、速やかに医療機関へ相談してください。発熱や広がる赤み、体調の悪化は感染の可能性もあります。急な呼吸困難や強い胸痛、意識がおかしい場合は119番です。湿布や痛み止めで様子を見続けないでください。
血栓の範囲と、深部静脈への広がりを確認
問診と診察で、症状の場所、始まった時期、広がり方、静脈瘤や点滴、血栓症の既往、服用薬などを確認します。深部静脈血栓症が疑われる場合には超音波などで調べます。症状が軽く見えても必要な検査は状況によって変わります。検査の結果、抗凝固薬が必要か、再検査や再診が必要かを確認しましょう。
薬は、痛みと血栓の危険に合わせて選ぶ
痛みを和らげる薬と抗凝固薬は、目的が異なります。抗凝固薬を飲んでいる人は、痛み止めを追加する前に医師・薬剤師へ相談してください。妊娠中なども使える薬が変わります。薬の名前、期間、飲み忘れの対応、出血時の連絡先を確認し、以前の処方や市販のアスピリンを自己判断で使わないでください。
長い安静や強い圧迫を、自己判断で続けない
診断と治療方針を確認した後は、痛みが許す範囲で普段の動きを続け、休むときは脚や腕を楽に上げる方法を相談します。深部静脈への広がりやほかの病気がある場合は、個別の指示に従ってください。弾性ストッキングは全員に適するわけではなく、種類・サイズ・使い方を医療者に確認します。包帯で強く締めつけることや、症状のある場所を強くもむことで済ませないでください。
点滴の周囲が痛い・赤いときは医療者へ伝える
点滴や注射後の痛み、赤み、腫れ、硬い部分は、担当の看護師・医師へ早めに伝えてください。発熱や赤みの広がり、体調の悪化があれば、その変化も伝えます。点滴による刺激と感染では対応が異なるため、針や管を自分で動かしたり、残っている抗菌薬を飲んだりせず、状態を確認してもらいましょう。
繰り返す場合は、背景の病気も確認する
軽い表在性の炎症は改善することが多いですが、改善までの期間には幅があります。症状が残る、悪化する、別の場所で繰り返す場合は再診し、静脈瘤、薬、血液が固まりやすい背景などを確認します。繰り返すことだけでがんと決めつける必要はありません。再診の時期と、予約を待たず連絡する症状を、受診時に確認しておきましょう。