概要
血栓症は、血管の中にできた血の塊(血栓)が血流を妨げる病気の総称です。血栓ができた場所や運ばれた先によって、脳梗塞、心筋梗塞、深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症などを起こします。血栓の一部が離れて血流に乗り、別の血管をふさぐことは血栓塞栓症と呼びます。症状や治療は一つではありません。
原因
出血を止めるために血液が固まることは、体の正常な働きです。しかし血管内で血栓ができると、血流を妨げる場合があります。動脈では動脈硬化などによる血管の異常、静脈では手術後の安静や長時間の座位などによる血流の停滞が関係します。がん、妊娠・出産、薬、血液が固まりやすい体質なども背景になります。心房細動では心臓内にできた血栓が脳などへ運ばれる危険があり、個々の原因を調べて予防を考えます。
治療法
どの血管が詰まったか、臓器への影響、発症からの時間、出血の危険などを評価して治療します。深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症では抗凝固薬が中心です。一方、脚の末梢の深部静脈血栓症などでは、血栓の状態や出血の危険を評価して経過を観察する場合もあります。抗血小板薬と抗凝固薬は働きや使い方が異なり、自由に置き換えられる薬ではありません。緊急に血流を回復させる処置が必要な病気もあるため、症状があるときに自己判断で薬を追加して様子を見ないでください。
急な息苦しさ・胸痛・片側の麻痺は119番
急な呼吸困難、強い胸痛、意識がおかしい、突然の片側の手足の麻痺やろれつが回らない症状は119番です。症状が始まった時刻を、分かる範囲で伝えます。病名を自分で確定してから連絡する必要はありません。片脚が急に腫れて痛む場合も、深部静脈血栓症などの可能性があるため速やかに医療機関へ相談し、息苦しさを伴えば救急要請してください。
検査は、疑う病気と血管に合わせて選ぶ
脚の深部静脈血栓症では超音波検査、肺血栓塞栓症では造影CTなどを検討します。Dダイマーは血栓を調べる補助的な血液検査ですが、この値だけで病名や治療の必要性を決めるものではありません。症状、手術・入院歴、妊娠・出産、がん、服用薬などを合わせて判断します。脳や心臓の血栓による病気では別の検査が必要です。
「血液をサラサラにする薬」をひとまとめにしない
抗凝固薬と抗血小板薬は、どちらも血栓の予防や治療に使われますが、作用と適応が異なります。現在の薬が何の病気のためか、いつまで続けるか、検査が必要かを確認しましょう。アスピリンなどの市販薬や痛み止め、サプリメントを追加する前に医師・薬剤師へ相談してください。飲み忘れの対応も薬ごとに異なるため、説明書や処方元で確認します。
入院・手術・長距離移動の前に予防を相談
動ける範囲で体を動かし、座ったままなら足首を曲げ伸ばしするなど、長時間同じ姿勢を避けます。手術後の動き方は医療者の指示に従ってください。脱水を避けますが、水分量について指示を受けている人は自己判断で増やさず相談します。血栓の既往やがん治療中などでは、圧迫療法や予防薬が必要かも個別に確認します。すでに脚の腫れや痛みがある場合は、予防運動だけで済ませず受診してください。
抗凝固薬を飲んでいる間の出血にも注意
血尿、黒い便、鼻血や月経の出血が増えるなど、普段と違う出血は処方元へ相談してください。止まらない出血、吐血、意識の異常などは緊急の受診が必要です。頭を強く打ったときも、外から血が見えないことだけで判断せず、直ちに医療機関へ連絡します。救急時には薬の名前と最後に飲んだ時刻を伝えてください。
治療後は、次の受診と薬の計画を持ち帰る
薬の目的と期間、次の診察や検査、再発を疑う症状、出血時の連絡先を確認します。静脈血栓症の治療期間は、原因が一時的か続いているか、再発と出血の危険によって変わります。手術・内視鏡・抜歯を予定するときや妊娠を考えるときは、薬を自己判断で止めず、担当医同士で調整できるよう早めに伝えましょう。