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肺血栓塞栓症(肺動脈血栓塞栓症)

最終改定日:

概要

肺血栓塞栓症は、血栓が肺動脈をふさぎ、肺への血流と心臓の働きに障害を起こす病気です。多くは脚や骨盤などの深い静脈にできた血栓が、血流に乗って肺へ運ばれます。突然の息苦しさや胸痛、失神などがあり、重い場合は命に関わります。脚の腫れや痛みが先に出ることも、目立つ症状がないこともあります。飛行機の利用者だけに起こる病気ではありません。

原因

長時間動かないこと、手術・外傷後の安静、がん、妊娠・出産、ホルモン薬、血栓の既往や血液が固まりやすい体質などが関係します。原因がはっきりしない場合もあります。「急に立ち上がること」が発症の必須条件ではありません。肺塞栓症には血栓以外が原因のものもありますが、ここでは血栓による病気を扱います。

治療法

呼吸と血圧、心臓の右側の負担などを確認し、重症度に合わせて治療します。抗凝固薬で血栓の拡大・再発を抑える治療が基本です。ショックなどでは、出血の危険を評価しながら血栓溶解療法、カテーテル治療、手術や循環補助を検討します。血栓を溶かす薬や下大静脈フィルターが全員に必要なわけではありません。入院の必要性と薬の期間は医療者が個別に判断します。

突然の呼吸困難・強い胸痛・失神は119番

急な呼吸困難や強い胸痛、意識がない・おかしい場合は119番へ連絡してください。飛行機に乗っていない、脚が腫れていない、唇が青くないことだけで、この病気を否定できません。薬の追加や水分補給で様子を見ず、症状が始まった時刻、最近の手術・入院、服用薬を分かる範囲で伝えます。

造影CTなどで確認し、重症度も調べる

病歴や症状、酸素の状態などを確認し、造影CT、血液検査、心エコー、脚の超音波などを組み合わせます。造影剤が使えるかなどによっては、肺の血流を調べる検査を選ぶ場合もあります。Dダイマーが高いことだけでは確定診断になりません。薬、造影剤アレルギー、腎臓の病気、妊娠の可能性は検査前に伝えてください。

薬・処置・入院は、重症度に合わせて選ぶ

抗凝固薬は血栓の拡大や新しい血栓を防ぐ薬で、血栓溶解薬とは役割が異なります。血圧や心臓の状態が悪化している場合には、血流を回復させる治療を検討します。一部の低リスクの人は外来治療も可能ですが、検査結果と生活・通院の支援を含めて医療者が判断します。下大静脈フィルターも条件を満たす場合に検討し、入れた場合は取り出す必要と時期を確認します。

抗凝固薬の期間・出血時の連絡先を確認

治療期間は、原因が一時的か持続しているか、再発と出血の危険によって変わり、定期的に見直します。自己判断で中断したり、アスピリンや痛み止めを追加したりせず相談してください。血尿、黒い便、出血の増加は処方元へ連絡し、止まらない出血・吐血・意識の異常などは緊急に受診します。手術や抜歯の予定、妊娠を考えていることも早めに伝えます。

退院後も続く息切れを、そのままにしない

次の受診日と薬の計画を確認し、息切れ、運動したときのつらさ、脚の腫れ、出血などを伝えましょう。肺の血栓が残り、慢性血栓塞栓性肺疾患や肺高血圧症を起こす場合があります。必要な検査や専門施設への紹介を検討します。症状が急に悪くなった場合は、次の予約まで待たず受診し、急な呼吸困難・強い胸痛・意識の異常なら119番です。

移動や療養中の予防は、個別の指示に合わせる

長時間同じ姿勢を避け、動ける範囲で歩いたり足首を曲げ伸ばししたりします。療養中の運動は医療者の指示に従い、脱水を避けます。水分量について指示を受けている人は、その計画を自己判断で変えないでください。血栓の既往がある人などは移動・手術の前に相談し、弾性ストッキングや予防薬が必要か確認します。すでに症状があるときは、予防だけで済ませず受診してください。

参考資料

  1. 肺血栓塞栓症:概要・症状・検査(更新日記載なし)日本呼吸器学会
  2. 血栓症ガイドブック:動脈・静脈の分類と症状(旧資料は基本説明に限定)日本血栓止血学会
  3. 肺高血圧症・肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症2025指針:2026年公開英語版の治療・経過観察の該当節日本循環器学会・日本肺高血圧・肺循環学会
  4. 2025年肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症・肺高血圧症指針の正誤表(2026年6月25日)日本循環器学会ほか
  5. Venous Thromboembolism — Treatment:抗凝固・血栓溶解・フィルター(2022年9月)米国国立心肺血液研究所(NHLBI)
  6. 救急車利用リーフレット・成人版:急な呼吸困難・胸痛・意識障害・出血総務省消防庁
  7. Venous Thromboembolism — Diagnosis:問診・画像・血液検査(2022年9月)米国国立心肺血液研究所(NHLBI)
  8. DVT:症状・救急受診・超音波検査(2026年4月見直し)英国国民保健サービス(NHS)
  9. Anticoagulant medicines:薬の違い・服用・他の薬と処置の相談(2024年9月見直し)英国国民保健サービス(NHS)
  10. Anticoagulant medicines — Side effects:出血と頭部打撲時の受診(2024年9月見直し)英国国民保健サービス(NHS)
  11. Venous Thromboembolism — Recovery:服薬・出血・継続受診・合併症(2022年9月)米国国立心肺血液研究所(NHLBI)
  12. エコノミークラス症候群の予防のために:長時間の座位と予防行動厚生労働省
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